HDDの処分方法にはいくつかの選択肢がありますが、そのうち当社が専門とするのは物理破壊です。物理破壊は、専用機を用いてHDD本体を貫通・切断し、記録面であるプラッタ(プラッター/記録円盤)を直接壊すことで、データを二度と読み出せない状態にする処分方法です。当社の事業の中心となる処理方式であり、ソフトウェアによる消去よりも確実性を優先したい法人・個人のお客様に選ばれています。故障して起動しない、認識しないHDDであっても、機械的に破壊するため問題なく対応できます。

物理破壊の仕組み穿孔・せん断・破断

物理破壊で用いる専用機は、大きく分けて「穿孔(せんこう)」「せん断」「破断」の3つの考え方でHDDに力を加えます。いずれも記録面であるプラッタに直接作用させることを目的としており、媒体の形状や台数に応じて使い分けます。

穿孔(せんこう)— ピンや刃でプラッタを貫通させる

穿孔は、先端の尖ったピンや刃をHDD筐体ごと打ち込み、内部のプラッタを貫通させる方式です。複数箇所を貫くことで、記録面に深い傷と変形を与えます。プラッタはガラスまたはアルミの円盤で、貫通した箇所の周囲にも割れや歪みが及ぶため、表面に傷をつけるだけの処理とは意味が異なります。

せん断 — 刃やプレスで切断・圧壊する

せん断は強力な刃やプレスでHDDを切断・圧壊し、プラッタを割ったり折り曲げたりして原形をとどめない状態にします。円盤を持たないSSDやM.2などの基板型の媒体に対しても、記録を担うフラッシュメモリチップごと切断できるため有効です。

破断 — 筐体ごと曲げ・潰す

破断は筐体ごと大きな力で曲げ・潰すことで、内部のプラッタやヘッド機構を物理的に壊す方式です。HDDは密閉された筐体の内部で、磁気ヘッドがプラッタ表面のごく近くを走る精密な構造になっているため、筐体が大きく変形した時点で読み出しに必要な機構が成り立たなくなります。

いずれの方式も油圧やモーターを用いた専用機によって行われます。人の手でドライバーを使って穴を開けるような作業とは異なり、短時間で安定して記録面を破壊できる点が特長です。ご自身で壊そうとした場合のリスクは自分でHDDを壊す危険性で解説しています。

方式仕組み記録面への作用対応媒体当社の使い分け
穿孔(せんこう)先端の尖ったピンや刃を、HDDの筐体ごと打ち込むプラッタ(記録円盤)を貫通させ、貫通部の周囲にも割れと歪みを広げる2.5インチ・3.5インチのHDDHDDの基本。専用機で複数箇所を貫通させる
せん断強力な刃やプレスで切断・圧壊する記録円盤を割る/フラッシュメモリチップごと切断するHDD・SSD・M.2・基板型の媒体円盤を持たない基板型の媒体で中心となる方式
破断筐体ごと大きな力で曲げ・潰すプラッタとヘッド機構を変形させ、読み出しに必要な精密構造を失わせるHDD・小型筐体の記録機器形状や厚みに応じて、穿孔・せん断と組み合わせる
手作業のドリル・金づち(参考)専用機を用いず、人の手で穴を開ける・叩く損傷が部分的にとどまり、記録面のどこまで壊れたかを確認できない当社では行いません(自分でHDDを壊す危険性

3方式はいずれも「記録面に直接力を加えて、連続したデータとして読み出せなくする」という同じ目的に向かうもので、媒体の形状と厚みによって選び分けます。方式ごとの位置づけを他の処理と横並びで確認したい場合はHDDの破壊・消去方式の選び方および物理破壊・デガウス・ソフト消去の比較をご覧ください。実際に廃棄機器から情報が漏れる経路を整理した廃棄したHDDからの情報漏えいはなぜ起きるかもあわせてご参照ください。

なぜ復元不可能なのか

物理破壊によって記録面(プラッタ)自体を壊すため、データ復旧の専門業者であっても信号を読み取ることができなくなります。HDDはガラスやアルミの円盤(プラッタ)に磁気でデータを記録しており、ソフトウェアによる消去が「記録内容を上書きする」処理であるのに対し、物理破壊は記録面そのものを変形・破砕するため、原理的にデータが残る余地がありません。

プラッタを貫通・切断・破断すれば、一部の破片が残ったとしても連続したデータとして読み出すことは極めて困難です。こうした確実性の高さから、機密情報を扱う法人のお客様を中心に、最終処分の方法として物理破壊が選ばれています。

穿孔(穴あけ)についての留保 — 専用装置であることが前提

NIST SP 800-88(現行版はRev. 2・2025年9月26日発行)は Sec. 3.1.3 で、「曲げる・切る、あるいは記憶装置に穴を開けるといった緊急時的な手順は、媒体を部分的にしか損傷させず、最先端の実験室的手法を用いれば一部が読み出せる状態を残すことがある」と注意を促しています(当社による日本語訳。原文は英語)。総務省のガイドラインも同じ点を指摘しており、HDDを穿孔する場合は専用の破壊装置を利用すること、マイナンバー利用事務系の住民情報を保存する記録媒体については「多点方式で最下層の円盤まで損傷を与えることができる専用破壊装置」を用いる必要があると記載しています(令和8年3月版 第3編 第2章 4.1 サーバ等の管理(7)機器の廃棄等・図表40/図表41)。

つまり「穴が開いていればよい」わけではなく、どの装置で・何箇所を・どの深さまで貫通させたかが水準を左右します。当社は専用機で複数箇所を貫通させる方式を採っていますが、仕様書に貫通箇所数や装置の要件が定められている場合は、対応可否を作業前にご確認いただけますようお願いします。手作業でドライバーや電動ドリルを使う処理は、ここで言う専用装置による穿孔とは異なります(自分でHDDを壊す危険性)。基準の全体像はデータ消去・HDD破壊の基準(NIST SP 800-88と公的ガイドライン)をご覧ください。

対応する媒体HDD/SSD/基板

2.5インチ・3.5インチの内蔵HDDはもちろん、外付けHDDのケースを外した後のドライブ本体にも対応します。SSDやM.2・NVMeなど基板型の記憶媒体についても、チップごと破砕することで物理破壊が可能です。

HDD物理破壊の料金

物理破壊の料金は、媒体の種類・台数や依頼方法(出張・持ち込み・宅配)によって異なります。具体的な金額は個別のお見積りとなりますので、目安は料金ページをご覧のうえ、詳細はお問い合わせください。

物理破壊の依頼方法出張・持ち込み・宅配

物理破壊は、出張オンサイト持ち込み宅配のいずれの方法でもご依頼いただけます。社外に持ち出したくない法人のお客様は出張、少数を確認しながら処分したい方は持ち込み、遠方や個人のお客様は宅配が向いています。

物理破壊の証明書・立会い

破壊作業の完了後は、媒体ごとにシリアル番号・破壊方式・作業日時を記載した記憶装置物理破壊完了証明書(一般に「データ消去証明書」と呼ばれる書類に相当します)を発行します。出張・持ち込みの場合は、破壊の様子に立ち会っていただくことも可能です。社外のデータ消去業者委託する形でデータ抹消を完了させた記録として、監査や社内報告にご利用いただけます。

物理破壊のご相談・お見積り電話・メールフォーム

物理破壊に関するご相談・お見積りは、電話・メールで承っています。媒体の種類・台数や、故障の有無などをお知らせいただければ、対応方法をご案内します。

FAQ

物理破壊に関するよくある質問

穴を開けるだけで本当に読めなくなりますか?

専用機による穿孔は、記録面であるプラッタ自体を貫通させて変形させるため、単なる傷ではなく記録の連続性そのものを破壊する処理です。ただしNIST SP 800-88 Rev. 2 は、専用装置によらない緊急時的な穴あけは媒体を部分的にしか損傷させない場合があると注意を促しており(Sec. 3.1.3)、総務省のガイドラインも穿孔には専用の破壊装置を用いるよう求めています。仕様書に貫通箇所数や装置の要件がある場合は、作業前にご相談ください。

故障したHDDでも破壊できますか?

はい、起動しない・認識しないHDDであっても、機械的に破壊する処理のため問題なく対応できます。むしろ故障品は診断や消去ソフトが使えないため、物理破壊が適した方法です。

破壊後の残骸は返却してもらえますか。返却しない場合はどう再資源化されますか?

ご希望があれば破壊後の媒体をお返しできますので、ご依頼時にお知らせください。ご返却を希望されない場合は、破壊後の媒体・機器を有価物として1点¥11(税込・税抜¥10)で買い取り、素材リサイクル(再資源化)のルートで再利用します。古物商許可(東京都公安委員会 第305590806398号)に基づく譲受けとして処理するため、産業廃棄物収集運搬業許可を前提とした処理は行っておりません。

破壊後の機器・媒体はどうなりますか?

破壊後の媒体・機器は、有価物として買い取り、素材リサイクル(再資源化)ルートで再利用します。破壊後の機器本体は、古物商許可に基づく買取で対応します(マニフェスト交付を伴う産廃処理は行っておりません)。