当社は「物理破壊専門」のサービスです

本ページは方式選びの参考となる解説記事です。当社が作業としてご提供するのは、専用機による物理破壊(穿孔・せん断等)と記憶媒体有無の確認作業のみで、デガウス(磁気消去)・データ消去ソフト・溶解などの作業受託は行っておりません。確実なデータ抹消をご希望の場合は物理破壊をご検討ください。

デガウスは、強力な磁界をHDDや磁気テープに直接かけることで、記録されている磁気データを破壊する処分方法です。装置にかけるだけで媒体全体の記録を一気に乱せる点が特徴です。もっとも、記録面そのものを壊す物理破壊を行えばそれだけで復元は不可能になるため、物理破壊単独で十分な確実性が得られ、当社ではデガウスとの併用は行っていません。また磁気を利用しないSSDには効果がないため、方式としての利用には媒体の種類の確認が前提となります。

デガウスの仕組み

HDDや磁気テープは、磁性体にN極・S極の向きとしてデータを記録しています。デガウス装置は非常に強力な磁界を発生させ、この磁気配列を瞬時に乱すことで、記録されていたデータを読み取れない状態にします。

装置に媒体をセットして処理をかけるだけで済むため、大量の磁気テープなどをまとめて処理する場合にも効率的です。

磁界の強さの単位 — 磁束密度(テスラ)と磁界の強さ(エルステッド)

デガウス装置の能力は、発生させる磁界の強さで表されます。磁束密度の単位にはテスラ(T)が用いられ、装置のカタログではガウス(G)で表記されることもあります(1テスラ=10,000ガウス)。一方、媒体側の性質を語るときには、磁界の強さを表す単位としてエルステッド(Oe)が使われることが多く、単位系が混在しやすい分野です。数値を比較するときは、どの量をどの単位で表しているのかを揃えて読む必要があります。

保磁力 — 媒体側が磁化を保つ強さ

保磁力(ほじりょく)は、いったん記録された磁化の向きが、外部の磁界によって反転しにくい度合いを表す値です。保磁力が高い媒体ほど、記録の並びを乱すためにより強い磁界が必要になります。つまり「何テスラあれば消えるのか」は媒体側の保磁力によって変わるため、一律の数値として示すことはできません。当サイトでは、装置と媒体の組み合わせによって結論が変わる値を断定的に示すことは避けています。必要な磁力の水準を確認される場合は、装置メーカーが公表する仕様と、後述のNIST SP 800-88 Rev. 2 の記載と評価済製品リスト(EPL)をあわせてご確認ください。

垂直磁気記録(PMR)と瓦記録(SMR) — 記録方式の世代差

現在のHDDは、磁化の向きを記録面に対して垂直に立てる垂直磁気記録(PMR)が主流です。さらに記録トラックを瓦のように部分的に重ねて記録密度を高めた瓦記録(SMR)の製品もあります。記録密度が上がるほど、磁性体には磁化を安定して保てる材料設計が求められるため、媒体の保磁力も世代によって変化します。

そのため、ある世代のHDDに対して十分だったデガウス装置が、別の世代の媒体でも同じ結果になるとは限りません。装置と媒体の組み合わせごとに確認が必要になる点が、デガウスという方式の扱いにくさのひとつです。記録面そのものを壊すHDDの物理破壊(穿孔・せん断)であれば、こうした媒体世代の差に左右されません。

NIST SP 800-88 Rev. 2 におけるデガウスの位置づけ

米国NISTの SP 800-88 “Guidelines for Media Sanitization”(現行版はRev. 2・2025年9月26日発行)は、デガウスについて Sec. 3.1.2 で次の2点を明記しています。

「本書の執筆時点で、デガウスは Destroy として承認された技法とは位置づけられていない」

出典:NIST SP 800-88 Rev. 2, Sec. 3.1.2(当社による日本語訳。原文は英語)

「磁気記録技術の高保磁力化にともない、既存のデガウス装置の多くは、そうした媒体を有効に消磁するだけの磁力を備えていない」

出典:NIST SP 800-88 Rev. 2, Sec. 3.1.2(当社による日本語訳。原文は英語)

つまり Rev. 2 の整理では、デガウスは Purge の考え方に含まれる技法であって、Destroy(物理的な破壊)として承認された技法ではありません。仕様書や社内規程で Destroy 相当の水準が求められている場合、「デガウスをかけたこと」だけではその水準を満たしたと説明できない点にご注意ください。3分類(Clear・Purge・Destroy)の定義はデータ消去・HDD破壊の基準で解説しています。

また旧版の Rev. 1(2014年12月発行)は2025年9月26日付で廃止(Withdrawn)されています。Rev. 2 では、暗号化消去を除く技術別の手法についての記述が本文から外され、IEEE 2883 等の外部規格や組織が承認した基準に従うよう求める構成へ変更されました。そのため「NIST SP 800-88 準拠のデガウス」という表現だけでは、その装置が対象媒体に対して十分な磁力を持つかどうかは判断できません。

装置が要件を満たすかを確認する方法

デガウス装置の能力を第三者の評価にもとづいて確認したい場合の代表的な参照先が、米国NSA(国家安全保障局)が公開している評価済製品リスト(EPL:Evaluated Products Lists)です。EPLには、デガウサー(Degausser)を含む媒体破壊装置のうち、NSAの評価基準を満たした製品が型番単位で掲載されています。検討中の装置がリストに掲載されているか、またどの媒体を対象とした評価なのかを、必ず発行元の一次情報でご確認ください。

上記URLは2026年7月31日時点で表示を確認したものです。なお当社はデガウス処理の作業受託を行っていないため、デガウス装置の保有・運用はしておりません。本節は方式を検討される際の参考として記載しています。

対応媒体(HDD・磁気テープ)とSSD不可の注意

デガウスが作用するのは、磁気によってデータを記録するHDDや磁気テープ(LTO・DAT等)に限られます(磁気記録媒体であっても、装置の磁力が対象媒体の保磁力に見合っていることが前提です)。一方でSSDやUSBメモリ、SDカードなどはフラッシュメモリにデータを電気的に記録しており、磁気を利用していません。そのため、デガウス処理を行ってもデータは一切消去されません。

SSDを含む媒体の破壊をご検討の場合は、デガウスではなく物理破壊やソフト消去など、媒体の記録方式に適した処理方法をご案内しますので、事前にお問い合わせください。

媒体記録方式デガウスの効果推奨する処理
内蔵HDD(2.5/3.5インチ)磁気記録(プラッタ)○ 方式としては作用する(装置の磁力が媒体の保磁力に見合っていることが前提)穿孔・せん断による物理破壊
磁気テープ(LTO・DAT等)磁気記録(テープ)○ 方式としては作用する(同上)カートリッジごとの物理破壊
SSD・M.2・NVMeフラッシュメモリ(電気的)× 効果なし(磁気を使わないため記録は変化しない)基板・チップごとの破砕
USBメモリ・SDカードフラッシュメモリ(電気的)× 効果なしチップごとの破砕
CD・DVD・BDなど光学メディア光学記録(記録層)× 効果なし裁断(¥110/点・税込)

当社はデガウス(磁気破壊)の作業受託を行っておりません。上の表の「デガウスの効果」欄は、方式としての一般的な性質を示したものです。磁気で記録する媒体であっても、装置が対象媒体の保磁力に見合う磁力を備えているかどうかで結果が変わるため、当社では磁気テープ・HDDを含むすべての媒体を専用機による物理破壊でお引き受けしています。媒体ごとの対応方針は対応する記憶媒体一覧(記録方式・破壊方法の早見表)で確認できます。

物理破壊との併用

デガウスと物理破壊を重ねる運用が紹介されることもありますが、記録面そのものを破壊する物理破壊を行えば、それだけで復元は不可能になります。当社では物理破壊単独での確実な処理をご案内しています。

磁気テープ・HDD破壊の料金

当社ではデガウス処理を提供していないため、デガウスとしての料金設定はありません。物理破壊の料金の目安は料金ページをご覧のうえお問い合わせください。

処理後に発行する証明書

処理完了後は、媒体ごとに処理方式・作業日時などを記載した記憶装置物理破壊完了証明書(一般に「データ消去証明書」と呼ばれる書類に相当します)を発行します。監査や社内報告の際の記録としてご活用いただけます。

磁気媒体の処分のご相談電話・メールフォーム

当社ではデガウス処理の受託は行っておりません。磁気テープやHDDの確実なデータ抹消は、物理破壊にて承りますので、電話・メールでご相談ください。

FAQ

デガウスに関するよくある質問

デガウスだけで安全ですか?

デガウスにより磁気記録を読み取りにくくすることは可能ですが、NIST SP 800-88 Rev. 2 は「デガウスは Destroy として承認された技法とは位置づけられていない」「既存のデガウス装置の多くは高保磁力の媒体を有効に消磁するだけの磁力を備えていない」と記しています(Sec. 3.1.2)。当社ではデガウスの取り扱いがなく、確実に復元不可能な状態にする物理破壊をご案内しています。

SSDにも使えますか?

いいえ、SSDはフラッシュメモリに電気的にデータを記録しているため、磁界を利用するデガウスの効果はありません。SSDには物理破壊など別の方法をご案内します。

処理後にHDDは使えますか?

いいえ、デガウス処理を行うと記録面の磁気配列が乱れるため、そのHDDを通常のデータ用途で再び使用することはできなくなります。